Ichisan - Extra Ball

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ダフト・パンク『Random Access Memories』がメインストリームを席巻したことでディスコ・ミュージックが何度目かのトレンドとして猛威をふるっているように見られがちな2014年のシーンだが、アンダーグラウンドの世界においてディスコの支流はいつの時代も刺激的なプラットフォームとして果敢なクリエイターたちの傍にあった。スロヴェニアのプロデューサー/DJ/フォトグラファーであるIgor SkafarことIchisanは、ロンドンのAirtight Recordingsから2008年にリリースした12インチ“Global Pillage”でソロ・キャリアのスタートを切るや、同作がエレクトロ・ファンクの巨匠でもあるリエデット・マスター、グレッグ・ウィルソンや、プリンス・トーマス、リンドストローム、トッド・テリエ、ビョーン・トシュケといったノルウェー・ディスコのトップDJたちにもスピンされたことで、一躍ニュー・ディスコの新星としてシーンにその名を轟かせる存在となった。

近年、ニュー・ディスコはアンダーグラウンドなダンス・ミュージックの潮流の中でもとりわけクリエイティヴな実験場のひとつとして機能してきたが、Ichisanにとってもそれは例外でなく、Eskimoのコンピレーション・アルバムへ提供した楽曲「Jugoton」や同郷のNakovaとの共作アルバム『Yugo Tempo』などにおいても、コズミックやバレアリックといったタームを通過しながら、特定のカテゴリーに偏り過ぎることのない彼特有のディスコ・アマルガムを一貫して聴くことができる。そして今回、catuneから初めてIchisanが国内に大きく紹介される契機となるであろう一枚が、本作『Extra Ball 12”』だ。

ヴィンテージなハードウェアがふんだんに使用された贅沢なプロダクションが早くも堪能できる表題のA1は、端正なエレクトリック・ブギー経由のニュー・ディスコ・トラック。本作では、全編を通してオーバーハイム・OB8、ローランド・Jupiter-6Juno 106TB 303SH9をはじめとするマシン類のサウンドが大きなウェートを占めており、シンセ・フリークの欲求にも大いに応える内容と言えるだろう。レイヤーされていくアルペジオがバレアリック度高めなA2は輪をかけてシンセ・オリエンテッドで、野太いシンセ・ベースのグルーヴとウワモノのフィルタリングがアシッディーなB1、メロディアスなエレクトリック・ベースとメインテーマ、クラップと後半からのパーカッションがクラシック・ディスコへのオマージュを感じさせるB2と、いずれもオリジナル・トラックながらIchisanの多彩さが反映されている。こうしたさりげなくブレンドされる弦楽器とシンセの絶妙なバランス、そして単なるDJツールに収まらないある種のキャッチさには、キャリアの初期ではいくつかのバンドでギタリストを経験してきたというIchisanのバックグラウンドが影響しているのかもしれない。なお、Ichisanはプリンス・トーマスのInternasjonalから今年リリースの予定があるとのことで、この界隈に興味のあるリスナーは引き続き注目しておく必要がありそうだ。

Greeen Linez - Remixes

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Greeen Linez is a collaboration between Chris Greenberg (from the British electronic pop band Hong Kong In The 60s) and UK-born/Tokyo-based DJ/producer A Taut Line (aka Matt Lyne, co-founder of the Diskotopia label). The project combines the ‘90s dance music and R&B that soundtracked Chris and Matt’s childhoods with the ‘70s/’80s jazz-funk and synthesizer soundtracks that they have obsessed over in the years since. All of this is filtered through the cocktail of retro pop, fusion and supermarket muzak that Matt has been exposed to during his time in Japan. Their debut album Things That Fade was released in summer 2012 on Diskotopia, receiving positive reviews in many highly regarded publications, as well as support from internationally famous DJs and producers. Greeen Linez did not start out with the intention of doing remixes, but following the release of their debut EP in 2011, they were approached by various artists they liked and respected, and so could not resist the opportunity to work with them. The duo’s approach to remixing varies greatly, depending on the material they are working with, but their aim is always to add some of their particular sound and atmosphere to the tracks, while remaining true to the spirit of the original music.

英国ケンブリッジ出身にして、現在は東京で自身のレーベル、DiskotopiaとサブレーベルのA Kind Of Presenceを主宰するマット・ライン。そして、同郷の幼なじみでエレクトロニック・ポップ・バンド、ホンコン・イン・ ザ・60sで活動を行っているクリス・グリーンバーグ。彼らは幼少の頃、イギリスのテレビ局が放送を終えた深夜に流していたミステリアスな音楽に魅せられていたのだという。その音楽の正体が分からぬまま、音楽と共に育ち、一時はポスト・ロック・バンドとして活動していたこともあったというが、2000年代初頭、DFAに象徴されるニュー・ウェイヴとダンス・ミュージックのクロスオーバー・シーンを通じて、ダンス・ミュージックに開眼。その後、日本に渡ったマットは幼少期に謎だった音楽が7080年代のジャズファンクやシンセサイザー・ミュージックであったことを偶然知り、70年代後半~80年代の日本産フュージョンやシティ・ポップに強い関心を持ったことから、グリーン・ラインズの活動はスタートした。

そして、2012年に発表したファースト・アルバム『Things The Fade』はフュージョンやシティ・ポップをアップデートしたクリスタルなシンセ・ファンクがニュー・ディスコやバレアリック・リヴァイヴァル、ブギー再 評価の流れとも共鳴し、DJ MagThe QuietusThe Wireといった世界的な音楽メディアでも高評価を獲得。そのコネクションは一気に世界へと広がっていったが、彼らの音楽的なバックグラウンドを考えると、長きに渡る活動を通じて、ポスト・ロックからダンス・ミュージックへと歩み寄りを見せている9dwこと斎藤健介主宰のレーベル、catuneとグリーン・ラインズが共鳴しあうのは必然的偶然だった。

catuneより昨年リリースされた「Landscape EP」に続くグリーン・ラインズの『Remixes』は、彼らがこれまで手掛けた数々のリミックスに、初出となるエクスクルーシヴ・リミックスを加えたリミックス・コンピレーション・アルバムだ。その収録曲は、国やシーンを超えた彼らの親交の広さとクロスオーバーな音楽性を可視化させると同時に、オリジナルを懐に引き寄せ、グリーン・ライズの個性を溶かし込んだダンス・トラックへと昇華させる卓越したサウンド・プロダクションを様々な角度から堪能出来る。

LAのインディ・ダンス・レーベル、100%シルクに所属するミ・アミ、マジック・タッチとの共作曲から大阪のアイドル・グループ、エスペシア「海辺のサティ」まで。あるいはイギリスのバレアリック・デュオ、シーホークスの「Ocean Of Space」からサンフランシスコのプロデューサー、ソーサラーの「Cobra Coven」まで。はたまた、日本の新世代ビート・クリエイター、sauce81こと鈴木信之の「All In Line」からウェールズのビート・プロデューサー・チーム、ダーク・ファミリーの「Sticky Trees」、catuneのメイン・プレイヤーである9dwの「Funky Magician」からMattが主宰するDiskotopia所属のBD1982Mau’linまで。カラフルに錯綜するヴァリエーション豊かな楽曲をダウンテンポからブギー、シンセ・ファンク、ディープなハウスミュージックへとトランスフォームする変幻自在のプロダクションは、ビートを担うマットとメロディや上モノを担うクリスが長年育んできたタイトなリレーションシップの成せる技といえるだろう。

なお、グリーン・ラインズは、ソーサラーやジャック・ルノー、ムーン・Bのリミックスをフィーチャーした最新12インチシングル「Hibiscus Pacific」をニューヨークの新興レーベル、ALLIANCE UPHOLSTERYより発表したばかり。本作ラストを飾るのはヴァイナル未収録のダンス・リミックスだ。 Greeen Linez - Remixes (digest) by catunerecords

WOZNIAK - Solution

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WOZNIAK, a solo band project by Yuta Hoshi is dropping it’s 2nd album “Solution” on catune. Hoshi is known for his machine techno project TESTAV and also as a member of bands such asDALLJUB STEP CLUB, OUTATBERO and HABIT. Catune released Greeen Linez, sauce81 and Sorcerer in 2013 crossing over from early 90’s electro-funk, synth boogie to balearic/nu-disco. WOZNIAK started his career when the label was at it’s hight leading Japan’s post-rock scene, but this release does not mean anything nostalgic.

WOZNIAK popped up when the post-rock scene was already at a saturated state, but has always kept the live instrumentation band sound with an techno influenced groove. Last year he took a big shift to a strict minimal techno/house sound releasing his first album “Effects And Nice” from his own label 77ROMANCE. Years of going out to night clubs, Hoshi came up with a connecting sound between the Berlin minimal of Basic Channel, Rhythm & Sound, Berghain and Ostgut Ton with post-rock.

Composing and playing every instrument on all six tracks, his influences from techno and dance music gives the synth, electric guitar/bass and live drums an architectural approach with a sound design that evokes affinity with Bauhaus and German minimal which takes this piece to another dimension of art compared to an ordinary dance rock.

Swirling synth sound of ‘Cell’ hanging like dark clouds as if the Apocalypse is about to begin, followed by ‘Morphling’ with a sudden drum kit, simple yet tight showing Hoshi’s skills as a drummer openning up “Solution” fearlessly. Artfully laid sharp cutting guitar and anthemic synth melody builds up/deconstructs like the huge architectures of Herzog & de Meuron. It’s also the episode 0 of last albums ‘TTT pt.1’. Structually influenced by BATTLES ’SZ2’ this cinematic piece ‘Heptagon’ is based on a very well tuned 7/8 breakbeat with mystic polyrhythm and arpeggio layered emphasizing the contrast compared to emotional guitar feed backs and uplifting basslines. Flowing through the calm dark ambient track ‘World’, connecting to noisy hard minimal ‘Less is more’ (Ludwig Mies van der Rohe!) via UR and Detroit is the fastest track on the album with 140bpm 4/4 kick and aggressive colorful sound particles, pulling up the vibe of the whole album. Lingering outro ‘2/15’ suggestive soundscape of RADIAN and TRAPIST, offers you a whole album listening experience till the end of ”Solution”.

WOZNIAK is restarting live performances with supporting members from May 10th, and already is eager to work on the next project. What is waiting for us after this solution? It seems that our hunger of interest won’t lack for a while.

DALLJUB STEP CLUBやOUTATBERO、HABITといったバンドのメンバーとして知られ、マシンテクノの可能性を追求するTESTAV名義でも活躍中のYuta Hoshiによるソロ・バンド・プロジェクト、WOZNIAKのセカンド・アルバム『Solution』がcatuneから5/3にドロップされる。2013年はGreeen Linez、sauce81、Sorcererの作品を通してアーリー90’sなエレクトロ・ファンクやシンセ・ブギー、バレアリック/ニューディスコまでを自在に横断してきたcatuneが、レーベル黎明期に牽引した国内のポストロック・シーンを出自とするWOZNIAKの新作をこのタイミングでリリースすることには、懐古主義とは全く別の意味合いがある。

WOZNIAKは、大局的にはすでに飽和状態にあったポストロック・シーンに生まれながら、バンド・サウンド/生演奏にこだわったテッキーなグルーヴの進化に理想を求め、昨年にはストイックなミニマル・テクノ/ハウス路線へ大きくシフトしたファースト・アルバム『Effects And Nice』を自主レーベル=77ROMANCEより上梓。ナイト・クラビングにどっぶりと浸かっていたHoshiが、Basic Channel~Rhythm & Soundからベルクハインやオストグッド・トンに連なるベルリン・ミニマルのラインとポストロックを思わぬ形で繋いだミッシングリンクとなった。

彼が全6トラックの作曲/演奏を手掛けた今回のアルバムでは、シンセ、ギター、ベース、生ドラムなどの生楽器が全面に使用されているものの、そうした迂回によって獲得された音に対するアーキテクチュラルなアプローチ、ジャーマン・ミニマルとバウハウスの親和性の高さを想起させるようなサウンド・デザインが、バンド回帰を凡庸なダンス・ロックとは異次元のアートへと昇華させている。

垂れ込める暗雲のようなシンセの羽音が黙示録的な始まりを告げるSE「Cell」に続き、突如シンプルなキットから弾き出されるビートがHoshiのドラマーとしての魅力を伝える「Morphling」で『Solution』は大胆なスタートを切る。こちらは巧妙に配されたシャープなカッティングとアンセミックなシンセのメロディーがヘルツォーク&ド・ムーロンの巨大建築のように発展/解体していく1曲で、前作の収録曲「TTT pt.1」のエピソード0にあたるナンバーでもあるという。構成面でBATTLES「SZ2」の影響を受けているというシネマティックな「Heptagon」(=七画)では、絶妙にチューニングされた7拍子のブレイクビーツを軸に錯視的なポリリズムとアルペジオがレイヤーされ、終盤に飛び交うエモーショナルなフィードバック・ギターや躍動感のあるベースラインとの有機的なコントラストを生んでいる。静謐なダークアンビエント「World」を挟み、URからデトロイト経由でネオ・インダストリアルへと接続するノイジーなハード・ミニマル「Less is more」(ミース・ファン・デル・ローエ!)が、6トラック中最速となるBPM140のイーヴンキックとアグレッシブかつ多彩な音の粒子の交配で、アルバム全体のテンションを一段と高いものとしている。RADIANやTRAPISTあたりの音響を思わせるアウトロ「2/15」の余韻が静かな幕引きを担うラストまで、『Solution』はリスナーに1枚を通してのリスニングを求める作品と言えるだろう。

なお、WOZNIAKはサポート・メンバーを迎えて5月10日よりライブ活動を再開、早くも次作の制作に取り掛かる予定となっている。本作で提示されたソリューションの先にどのような世界が待ち受けているのか、しばらくは我々の興味が尽きることはなさそうだ。